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イタリア旅行1、2

今回の麻布十番での個展はイタリア風景画も展示されている。

そこで、きょうから数日にわけて、イタリア旅行の時の記事を掲載しよう。

1.到着まで

 ロサンジェルスを出発し、シカゴで乗り換えた飛行機は夜のうちにイギリスを抜け、フランス上空で空が明るくなってきた。窓から下を覗くとまだくらい闇の中に光の集まった街が見えそこから放射線状に光の道が広がっている、この道が地形にそってだと思うがくねくねと曲がっているところがヨーロッパらしい、アメリカでは、たいてい直線になっている。
 その闇の向こうに朝日がしてきた頃,飛行機は一旦海の上に出た、たぶん、ここらあたりはコートダジュールの上空だろう。つまり、フランスから地中海に抜けたと言う事だとおもう。そしていくつか島の上を通過してレオナルド・ダ・ビンチ空港へ到着。


2.フィレンツェ

イタリア旅行1、2_d0151267_1604981.jpg ここからはイタリア、一体英語はどこまで通じるのだろう、今更心配しても始まらないが、予定では今日このままフィレンツェへ入る。とりあえずローマへ出て、そこからフィレンツェ行きの急行に乗り換えるはずだったが、どうも乗ったのは快速かなにかで、到着が2時間ほど遅れてしまった。しかし、おかげでトスカーナの美しい田園風景を堪能することが出来た。いろいろな場所に古い建造物が見える、次回はここらの村を一つずつ時間をかけてゆっくり回るのもいいかなと考えながら外を見ていると、やがて建物が増えてきてフィレンツェに到着したことがわかった。
 ここから今回の宿泊所までは歩いても15分程のはずだが、最初なのでタクシーで向かうことにした。タクシーは町中を抜け、ドゥオーモの横を通り宿泊地へ、今回はホテルではなく、ベット・アンド・ブレックファースト(B&B)に泊まる。
 ベット・アンド・ブレックファースト(B&B)はその名の通り朝食付き宿泊所、たいていホテルより規模が小さく、お風呂の代わりにシャワーのみということが多いが、部屋数が5から10くらいしか無いので、オーナーと親しく話す事が出来る。
 ちなみにこのB&Bの入り口だが、普通の建物の2階部分だけを使用してるので、アパートにでも入るような感じの入り口で、ドアの横にあるブザーでオーナーを呼び出して、ドアを開けてもらう。

イタリア旅行1、2_d0151267_15582917.jpg ここフィレンツェは、ルネッサンスの中心地、この時代のあらゆるアート、それも最高の作品が揃っている、しかし、しかし中でもボッティチェリ、ミケランジェロ、それにレオナルド・ダ・ヴィンチがこの時代の芸術の主役だろう。この3人の作品を見る為にここまでやってきたのだから。
 しかし、その作品群を見る前に目に飛び込んでくるのがドゥオーモの大きさ、滞在しているB&Bの前の道から小道を曲がったとたんその道の向こういっぱいにそびえ立っている,とにかくその巨大さには驚く。5世紀も昔、この教会を造ったときの人々の熱意や苦労がそのまま伝わってくる。このドゥオーモの円蓋を造ったブルネレッスキ、資金を提供したコジモ,その他のルネッサンス芸術の推進者たち、この街こそが、ルネッサンスの息吹をそのまま伝える芸術なのは間違いない。しかしそれにしても面白いのはこの街とメジチ家の関わり合いだ、何世代にもわたって、この街と関わりながら時には追放されたり暗殺されたりしながら結局はこの街の統治者として帰ってくる事になったメジチ家の人々。
 メジチ家がルネッサンス芸術を推進したのか、芸術家たちが造り上げたのか、あるいはこの街の人々がそうさせたのか。恐らく答えはその全てなんだろうが、後世のヨーロッパ芸術の生みの親として、この時期のフィレンツェの街は最高の仕事をした事になる。そしてその頃の街並がそのまま残っているというのだから、私たちのようなアートを生業にしている人間にはたまらない魅力を持った街である。
 今日は軽く街を一回りして明日様々な美術館で、出逢えるすばらしい作品たちの事を考えながらB&Bに一旦帰ることに。
 夜はB&Bのオーナーの勧める地元の人が良くいくという、オステリア(軽食の店)「ZIO gigi」という店に行った。ホテルのすぐ裏手だが、人通りの無い道の中程にある店でパスタに豚のステーキ、そしてワインはもちろん測り売りのキアンティ。ここが驚く程安い,さすがオーナーのお勧め。
 旅行に行くといつもそうなのだが、次の日は時差ぼけのためかなり早く目が覚めた。
そのまま朝食前に近くを回ってみる事にして、B&Bを出て、昨日回ったあたりを探索、朝見るとまた違った風景が見れるので面白い。観光地だけの事は有って、早い時間から、清掃車が出て昨日の夜のゴミを片付けている。
 午前中は楽しみにしているダビデをアカデミアで鑑賞、これはメジチ家を追放したフィレンツェからの依頼で、3年を費やしてミケランジェロが制作した、共和政の象徴となった作品。
 とにかく驚きの作品としか書きようが無い、それ以上何と書けばいいのだろう。会場には人が少しづつ増えていっていたが、私はダビデを見つめたまま動けなかった。この彫刻の事は良く知っていたし、いろいろな本で書かれている解説や評論ももちろん読んできた。しかしそれはあくまでも他人の意見だ。それでは、私のこの像を前にした自分自身の意見は、一体なんなのだろう。ダビデを見た後、今この文章を書いている今、改めて、自分に問いかけてみたが、感動という言葉以外何も浮かばない。そこには私がいて、ダビデが有って、それを丁度500年前それを制作したミケランジェロがいて、そして、そこには感動が有った。そして今もその感動は続いている。
 彼の29歳のときの作品という事だが、その若さでこれほどの作品をという思いと、確かにその若さでなければ造れなかっただろうこの大きさ、これこそがルネッサンスと言う時代を象徴する作品では無いだろうか。その前には未完成の奴隷像が展示されていて、大理石を削りだして行く工程がよくわかる。
 アカデミアを出た後はその裏手にあるサン・マルコ修道院を訪れたが、ここはあの有名なサヴォナローラがいた修道院で、細かな説明は省くとしても、この修道士がフィレンツェで行った活動は興味深い物が有る、一体どうして彼は殺される事になるほど極端な思想に取り付かれてしまったのだろう、最初はメジチ家や市民のマテリアリズムな生活に異を唱え、やがてはついにメジチを追い出し、フィレンツェを一時的にせよ掌握してしまう。しかしながらその勢いでローマ教皇までも批判をしてしまい、独自の道を歩きだしてしまう。実に不思議な男である。
 その後、お昼は労働者に囲まれながらピザ量り売りの店で食べた。おなかもすいてきたしお昼だしと、このお店に飛び込んでみたが、注文のシステムがわからず前に並んでいる人の、様子を見ていると、どうも、気に入ったピザを指差しカットの大きさを言えば良いらしいという事に気づき、ジャガイモのピザと茄子のピザをそれぞれ小さく頼んでみたが、やっぱりイタリアで食べるピザはおいしい、日本で言うなら近くのラーメン屋という感じだろうか。
 午後からウフィツィを訪れたが,ここはルネッサンスが全て集まっている美術館で、ここに来なくてはルネッサンス芸術は語れないと言ってもいい程だ。ここだけできちんと見ようと思ったら3日、いやそれ以上かかる。
 ここにはあの有名なボッティチェリの「春」と「ビーナスの誕生」がおかれている。もちろんその他にも、ラファエッロやミケランジェロ、ダ・ビンチの作品等も有るのだが、私にはこのボッティチェリの2作が当時ルナッサンスの中でこそ生まれた作品だと思える、事実ボッティチェリはその後上記のサヴォナローラの説教によりキリスト教を題材とした作品を書いているが、それらの作品には精気が無く、いかにも仕方なく描かされたと言えるような作品である。それらの作品に比べ,この2作の自由なテーマ、そしてこの表現力、美しさだけではなく、思想的にも、一つの頂点を迎えている。この作品はボッティチェリだけではなく、ロレンツォ・デ・メジチがいたからこそ生まれた作品だと思う。そのロレンツォの詩にはこの様に書かれていて、このボッティチェリの作品と見事なまでに調和する、その詩とは

 「青春は麗し されど逃れゆく 楽しみてあれ 明日は定め無きゆえ」

 さてその他の作品であるが、とにかくものすごい、ルネッサンスのアーティストが皆そろっている。ジオット、チマブーエ、フィリッポ・ビッポ,ダ・ビンチ、ラファエロ、ミケランジェロ、ティツィアーノ、カラヴァッジョ、中でもうれしかったのはコジモを始めメジチ家の人々の肖像画が有った事だ、やはりこの街はこのコジモがいて、ロレンツォがいて、教皇となったレオがいて、トスカーナ大公となったコジモ一世と続いていくメジチ家の財力なしには存在し得なかっただろう。
 しかし何時の時代にも、芸術をサポートする後援者が存在する。これはパトロンともサポーターとも呼ばれるが、このような後援者がいて初めて芸術家は自分の作品制作に没頭できるのである。
 このフィレンツェにおいてのメジチ家はまさにそれである、それは、真の芸術を見分ける目と、芸術家をサポートできるだけの財力が必要だという事が出来る。
もちろん中にはゴッホの様に死ぬまで買い手が着かず自殺、あるいは早死にしていく画家もたまにはいるが、彼とてもし絵が売れていれば、自殺を思いとどまっただろうし、そうすれば、その後彼も絵をもっと突き詰めて探究し、さらにすばらしい作品を作り上げる事が出来たかもしれない。ゴッホは残念な事にその後援者に出会えなかった。
 しかしこの時代のフィレンッエはすばらしかった。メジチ家だけでなく、街中が芸術のサポーターだったのだ。
 今の日本も、世界の国々から比べれば、本当に豊かな国なのである、こういう、芸術をサポートしていける心の豊かな国になってほしいと望むばかりである。

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by nobuhaihara | 2008-03-11 16:01 | イタリア旅行
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